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Just Cause3がめちゃくちゃおもしろかったよという話と、やりがいのない不自由ってそんなにいいものですかというお話

f:id:ATR-log:20180826171848j:plain 突然オープンワールドでめちゃくちゃに暴れてみたい気分になったので、Twitterで「PS4でいっちばんめちゃくちゃで気持ちいいオープンワールドゲーってなに?」と聞いてみたところ「Just Cause3」をおすすめしてもらえたのであまり悩まずに即購入しました。
僕は高層ビルを垂直に駆け上がり破壊を撒き散らすジェームズ・ヘラーにオープンワールドの常識を破壊された人間なのでこの手のゲーム求める水準が妙に高くなってしまっていたのだけど、ジャスコ3はそのハードルを越えてしまいました。
なにせ、

ゲーム開始数十分でこれを体験させてくれるゲームなんですよ。最近のゲームってすげえや。
そしてこの破壊を撒き散らしに行くための移動にストレスがない。
車通りの多い道に出て誰かから車を奪わなくたって、近場の空港や軍事基地を探して飛行機やヘリを盗まなくたって、ちょっとした距離ならグラップリングフックで加速し、パラシュートで空へ舞い上がり、なんだったらムササビスーツで飛んでいけばいいんです。

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▲パラシュートとウィングスーツ、さらにスリングショットでの再加速を組み合わせれば半永久的に飛べるし、DLCの特殊装備なら推進力を得て好き放題に空を駆け回れる。

ジャスコ3はとにかくめちゃくちゃなゲームで、なんでも壊せるしなんでも爆発するし、どんなものにも飛びついて登れて、どんな高所から飛び降りてもノーダメージで着地できます。 飛行機からロケットランチャーをぶっ放し、フックで忍者のように崖を登り、主人公の生まれ故郷であるメディチで圧政を強いる将軍ディラベロの兵どもを吹き飛ばし、バベリウム爆弾で橋をぶっ壊したあと、反乱軍を率いて戦いを始めるために古くからの友人であるマリオ・フリーゴの元へ向かう主人公、リコ・ロドリゲスが目にするのは青い海と海岸線の街。

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ああいい景色だ。落ち着いたらあそこに遊びに行こう。マリオと話して車に乗り込み、反乱を始めたリコの最初の仕事は行きがけに遠くから眺めたあの街を解放すること。これでこのゲームを好きにならないわけがないのです。

種類こそ若干控えめなもののビークル武装の種類もそこそこあるし、リコ単体では火力不足になるゲーム後半における戦闘はフックによる立ち回りと奪った戦車や戦闘ヘリが活躍するバランスも個人的にはかなり好きな部類でした。 硬いアーマーを纏った兵はフックで手近な天井に吊り下げて蜂の巣にしてもいいし、崖下にふっ飛ばしても壁に叩きつけてやってもいい。
エンジンを吹かして追ってくる車両や機銃を撃ってくるヘリはどっかその辺のなにかと連結してやれば勝手に転んでおしまい。このゲームは何がやってこようと大体フックで片がつき、それでどうにもならないならロケットランチャーで吹き飛ばすか設置式爆弾で吹き飛ばすかの好きな方を選べる。

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朝は訪れた先の景色に目を奪われ、

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昼は軍事基地にキノコ雲を昇らせ、

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夜はドライブがしたいからと崖の上からお気に入りの車を運び込む。

メディチでの生活は「こうしてやりてえな」を強引に実現することの繰り返しで、破壊の快感と移動の快適性がそれを止めさせない。
破壊と混沌のジャスコ3、おすすめです。
「お前が今まで手間かけてやってきたやつ、実はこれで簡単にできるぜ」を叩きつけられない限りは。

これ最初からできてもよくない?の話

ここからは別に読まなくてもいい話です。
ジャスコ3は「ギアMOD」と呼ばれるシステムで装備やビークル、ガジェットに様々な機能を追加でき、このMOD群はマップに点在するスキルチャレンジで高い評価を得ることで解禁されていきます。
それは例えばムササビスーツからパラシュートを経由しなくても着地できる機能だとか、フックでより重いものを引き摺れる機能だとか、そのチャレンジを最高評価でクリアするのに必須のビークル加速機能だとか。

このゲームはここだけが厄介で、チャレンジで解禁される要素をチャレンジクリアのために要求してくるうえ、指定された条件に律儀に従っていると妙に難しくなるものが混ざり込んでいます。 どこからなにをしても自由なオープンワールドゲームであるがゆえに本編から外れたチャレンジ要素には導線がなく、メインミッションを進める傍らで訪れた近辺のチャレンジを遊んでいくだけでも、歪なアンロック方式に良くない印象を抱いてしまう。

例えば「船舶マニアI」というディストラクション・チャレンジがあります。メインミッションで通るルートからも近く、大きな目立つ基地にあるので多くのプレイヤーが序盤に訪れることになります。
基地の中に船が配置してあり、船に付いている機銃で基地内の主要なオブジェクトを連続で破壊していくことでハイスコアを狙うチャレンジなのですが、この機銃がかなり頼りなく、射程と角度の都合で初期位置からでは一部のオブジェクトにしか弾が届きません。
そのため逐一船を移動、あるいは乗り換えては機銃に戻って撃って……を繰り返すことになるのですが、このゲームの船の挙動はなかなかリアルで、しっかりブレーキをかけて止めてもすぐにゆらゆら動いたり向きが変わったりしてしまいます。
これも考慮して時間内に機銃で最高評価相当のスコアを稼ごうとするとけっこう本格的な詰め方が必要で、他のチャレンジと比較してもなかなかの高難易度になります。
しかしこのチャレンジには簡単な攻略法があります。他所の基地を制圧して違う船をアンロックすることです。
機銃が砲台になっている船があります。この砲台は360°回転し、射程も長く、爆発範囲が広いので初期位置から最高評価の取得が可能です。デフォルトで指定されている船のようにどこどこの方角から始めて、何を破壊したらどこに移動して、船を完全に静止させるために何kmのスピードでどこでブレーキをかけて…なんて考えなくてよかったのです。砲台用意して、ぽんぽんぽん。おしまいです。
いやいや、後半にアンロックされる船で楽になるというのは当たり前の話で、ただのズルでしょう。
そんな人のためにもうひとつおすすめの攻略法があります。グラップリングフックを活用することです。
このチャレンジは「オブジェクトの破壊が始まった瞬間」からスタートするので、効率的な破壊を実現するための「準備」が可能です。
この仕様を活用し、機銃では破壊できない角度のオブジェクトに予めフックを仕込んでおいて、機銃に取り付いてからワイヤーの引力により遠くのオブジェクトを先に破壊してしまうのです。
連続で破壊することでスコアには倍率がかかりますから、ボーナスの「着火剤」としてこれを活用すると最終スコアはぐんと上がるわけですね。
さて、しかしながらこのフック、この時点で取り付けられるのは大抵2つまでです。これでは稼げるスコアも雀の涙。「この時点で」「大抵」と言ったのは、このフック制限が後々のアンロックにより6つにまで緩和されるからです。
……どうせアンロックされるまで放っておけば楽になるんだから真面目に取り組みたくないって? では初期状態のリコでもできる一番簡単な攻略法を教えましょう。言うことを聞かないことです。
この基地は水門の上に対空砲が設置してあります。そいつを…

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監視塔に運び込みます。これで砲台付きの船を使用するのとほぼ同じ条件でチャレンジに挑めます。……船舶、使えよ!
ただ難点として、この対空砲けっこう重いんです。足がしっかりしていますからちょっとした段差を登るにもフックを使ってずるずるずるずる……
水門から監視塔までのルート取りや高所への運搬も合わせると、道中トラックで牽引してもそこそこに時間がかかります。まあ、ワイヤーの牽引力も後々アンロックで強化されるんですけど。

このチャレンジに関わらず、例えば初めてのエアレースチャレンジで最高評価を取るためには一度平均的なスコアである☆3評価を取ってレースを抜けてから加速機能をアンロックし、同じチャレンジに入り直してからMODで加速するだとか、
例えばグラップリングフックとグレネードのみでオブジェクトを破壊するチャレンジをクリアしてギアを集めないとフックの制限が緩和されないので 外からの砲台の持ち込みがほぼ前提だとか、ジャスコ3のチャレンジ要素はこういうのが散見されます。
対空砲の持ち込みはまあいいんです。柔軟な発想をしているやつがいい思いをするわけですから。でも「使えないヤツをデフォルトに設定してるから楽をしたかったら性能いいやつを持ってこい」が個人的には完全にダメです。チャレンジがチャレンジでなくなってしまうから。
このゲーム、アンロックさえしていれば基本的に何使ってもいいんです。だからレーシングカーを持ち込んだらカーレースチャレンジの9割は適当に流すだけの作業になるし、エアレースもボートレースも適当に速いやつに乗ってアクセルベタ踏みでぼけーーーーっと眺めてたら終わります。虚無になってしまうんです。
じゃあズルなんかせずに真面目に取り組めばいいだろって? でもこれに真面目に取り組んだご褒美って、ズルのアンロックなんですよ。比べて、ズルをする余地がほぼないウィングスーツチャレンジと爆弾車のチャレンジのどれほど楽しいことか。
さっきからズル、ズル、と言っていますが、これらの機能はアンロックされれば普段から最大限活用していくことになるものがほとんどです。
折につけ考えてしまいます。これ最初からできてもよくない?
最たる例が「ムササビスーツでの滑空状態からパラシュートを開かずに着地する」機能なんですが、これについてはDLCの特殊装備を貰うことでチャレンジをやらずとも実現できます。こいつはL2トリガーで減速してそのまま着地する機能を持っているからです。これ最初からできてもよくない?

ちょっと横道に逸れて、違うゲームの話をさせてください。Devil May Cryというアクションゲームの名作シリーズがあります。
悪魔(あるいは魔人)の力を持った主人公が多彩なアクションでスタイリッシュに敵をなぎ倒していく爽快でストイックなタイトルなのですが、このゲームも攻略に役立つほとんどの技能はアンロック式になっています。
中でも慣れたプレイヤーが真っ先にアンロックするのは、「エアハイク」や「スティンガー」といったスキルです。前者が2段ジャンプ、後者が素早い前進攻撃技ですね。彼らがこの2つを優先して買うのは、戦闘が楽になるからでも、クリア評価を上げるのに役立つからでもなく、この2つが「このゲームを遊ぶ上で最低限必要な動きをするのに必要だから」です。
まず、エアハイクがないと登るのが面倒な足場があります。スティンガーは連発することで走るよりも移動が早くなることに加え「スティンガージャンプ」というゲーム内では説明されない隠し機能があり、崖に向かってスティンガーを発動すると横方向に強力な慣性をかけて遠くにジャンプすることができます。この2つはステージ内に隠された要素の収集に役立ち、作品によっては「そこに辿り着いた時点でそのスキルを持っていないならその時点での隠しアイテム取得が不可能」になってしまいます。後期の作品であればのちのちステージに入り直せば済みますが、初代作品であるDMC1だとミッションのリプレイができず、2周目まで回収を待たなければいけない場合もあります。
だからみんな移動系のスキルを優先して取るんです。だって楽だから。取り逃しを後回しにされてモヤモヤしなくても済むから。
ただでさえスキルのアンロックに必要な「レッドオーブ」というアイテムは使い道が多く、コンボのバリエーションを増やすためにも大量に消費します。
このゲームは違う種類の攻撃を矢継ぎ早に使用しなければランクが上がらないので、攻撃の選択肢は多いほうがランクを上げやすく、要するに何も持っていない序盤が一番面倒くさくて難しいのです。ビギナーに段階的に操作を覚えてもらうための試みだとかプレイのモチベーションの維持のためだとか、いくつか事情は思いつきます。でも終わってから振り返れば、それらはなんだかやるせない、「やりがいのない不自由」でしかありませんでした。
だからDMC3辺りから、いつも思うようになりました。じゃあそれ、最初からできてもよくない?
モヤモヤしながら、これ以上モヤモヤしないように、機械的にレッドオーブを稼ぐ時間に目を向けざるを得なくなってしまったのです。

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このシリーズは熱烈なファンが多く、別ハードに移植される度に買ってクリアするマニアが多く見られます。僕もそのひとりです。
現在のシリーズ最新作である「4SE」では、スキルのアンロックに必要なレッドオーブがついにDLCとして現金でも買えるようになりました。
そういった話題にはちょっぴりデリケートなビデオゲーム界隈ですが、これについてはみなさん意外と好意的に受け止めて買っていたと記憶しています。
だってアンロックをやり直すのはめんどうくさくて、僕らにはもう退屈で不自由な時間でしかないから。

話をジャスコ3に戻します。これも同じだと思うんです。アンロックで解禁される要素が「それ最初からできてもよくない?」だったとき、どうしてもやるせなさが付きまといます。
初見プレイ特有の試行錯誤は楽しいかもしれません。でもあとになって「これがあれば楽だったのにね」を何度も何度も叩きつけられると次第に感動は薄れていきます。
極端な話、みなさん昔遊んだクッキークリッカーのデータリセットしてみてください。オートクリック系が解禁されるまでの時間、面白いですか? 僕はちょっと無理です。
「これからの遊びが楽しくなるアイテムをやるぞ」を、今やっているのが面倒なことだと知った上で散々面倒な思いをしたあとに見せられても、ゲーム体験の鮮度はとうに失われているのです。
じゃあアンロックを待って楽になるのを待つのが正解なのかというと、楽になるまでの過程には「取り逃しがある」というモヤモヤがついて回ります。
今真面目にやることがバカバカしいとわかっていても、恨みがましく、何を取り逃したか忘れてしまわないように記憶に刻みつけて、牛の顔にキスをするリコ・ロドリゲスのように、チャレンジエリアを後にすることになるのです。

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そんなモヤモヤを味わいながらチャレンジ埋めに苦しんでいるうちに、ロードTipsにある一文を発見しました。

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そう、要するに、僕はジャスコ3のチャレンジを勝手に「スキルチャレンジ」と解釈していたけれど、ジャスコ3は別にプレイヤーのスキルなど全く問うていなかったのです。チャレンジを発見する度に律儀に最高評価を目指して最大効率でギアをぶんどっていく酔狂で神経質なプレイヤーを前提には作っていなかったのです。
今やるのが面倒なら大人しく出て行けと。もっと強くなっているのを想定しているんだから無茶をするなと。これだけでも気持ちが随分楽になります。
適当で良かったのです。今できることだけを雑に流して、高評価によってもっともっとギアが欲しくなったらまた来ればいいんだよとシステムが教えてくれた瞬間であり、同時に多くのチャレンジがアンロックによって楽々クリアしてさらなるアンロックを狙うだけの水増しなのだと確信してしまった瞬間でした。
じゃああとにしようと、進めたかったミッションを遊んで気が向いたらこのチャレンジを埋めに来ようと、モヤモヤから目を逸らしながらメイン攻略に戻りました。

チャレンジを埋めに帰ってくることは、二度とありませんでした。

ゲームはもっとゆるく遊ぼう

結局のところ、ジャスコ3のテーマはどこまでも「破壊」でした。
それは理不尽な火力を叩きつけるど迫力の戦闘における「破壊」であり、アンロックによって強化される機能でこれまで困難であった諸々をいともたやすく跳ね除けるゲーム体験としての「破壊」でもあったのだと考えることにしました。
ジャスコ3には正しい遊び方が用意されていて、それはもっともっとゆるく遊ぶスタイルだったのだと思います。
それでもやっぱり最初からできていいことは最初からできて欲しかったと思ってしまうのは、最初からできていいことが最初からできる面白いゲームをもう知っているからというのもあるのかもしれない。
そんな不満をプレイ中にTwitterでつい漏らしたところ、大変ありがたいことにこのゲームを勧めてくれた方がsteam版のkeyまで譲ってくれました。
ギアMODのみを全解禁した状態でシナリオを最初から始められるなんとも都合の良いセーブデータが導入できるようです。
ならもう、メディチにはいつでも帰ってこられる。
「できることが最初からできるJust Cause3」もきっと楽しいだろうから、今度はもっともっとゆるく遊ぼう。モヤモヤでゲーム体験が腐ってしまう前に、おいしいところにだけかじりついていたい。

だからこれから遊ぶ人には、ジャスコ3はゆるく遊ぶことをおすすめしたい。
steam版でセーブデータをぶち込むなり、即DLC1の最初のミッションだけ触って改良ウィングスーツを取得するなり、シーケンスだのコンプリートだのは気にせずに、ただ気の向くままを徹底してメディチでの反乱活動を楽しんでいただきたい。
自分のプレイスタイルに合わない導線が用意されていても、無理やりゲームクリアまで遊んだ挙げ句にこんな稚拙な文章を長々と書いてしまうくらいにこのゲームは豪快で楽しいからです。ジャスコ3はいいぞ!

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ビバ、メディチ